くなっていくのでした。そしてちらっと大きなとうもろこしの木を見ました。その葉《は》はぐるぐるに縮《ちぢ》れ葉《は》の下にはもう美しい緑《みどり》いろの大きな苞《ほう》が赤い毛を吐《は》いて真珠《しんじゅ》のような実《み》もちらっと見えたのでした。それはだんだん数を増《ま》してきて、もういまは列《れつ》のように崖《がけ》と線路《せんろ》との間にならび、思わずジョバンニが窓《まど》から顔を引っ込《こ》めて向《む》こう側《がわ》の窓《まど》を見ましたときは、美《うつく》しいそらの野原の地平線《ちへいせん》のはてまで、その大きなとうもろこしの木がほとんどいちめんに植《う》えられて、さやさや風にゆらぎ、その立派《りっぱ》なちぢれた葉《は》のさきからは、まるでひるの間にいっぱい日光を吸《す》った金剛石《こんごうせき》のように露《つゆ》がいっぱいについて、赤や緑《みどり》やきらきら燃《も》えて光っているのでした。カムパネルラが、
「あれとうもろこしだねえ」とジョバンニに言《い》いましたけれども、ジョバンニはどうしても気持《きも》ちがなおりませんでしたから、ただぶっきらぼうに野原を見たまま、
「そうだ
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