者《しきしゃ》のようにはげしく振《ふ》りました。すると空中にざあっと雨のような音がして、何かまっくらなものが、いくかたまりもいくかたまりも鉄砲丸《てっぽうだま》のように川の向《む》こうの方へ飛《と》んで行くのでした。ジョバンニは思わず窓《まど》からからだを半分出して、そっちを見あげました。美《うつく》しい美《うつく》しい桔梗《ききょう》いろのがらんとした空の下を、実《じつ》に何万《なんまん》という小さな鳥どもが、幾組《いくくみ》も幾組《いくくみ》もめいめいせわしくせわしく鳴いて通って行くのでした。
「鳥が飛《と》んで行くな」ジョバンニが窓《まど》の外で言いました。
「どら」カムパネルラもそらを見ました。
そのときあのやぐらの上のゆるい服《ふく》の男はにわかに赤い旗《はた》をあげて狂気《きょうき》のようにふりうごかしました。するとぴたっと鳥の群《む》れは通らなくなり、それと同時にぴしゃあんというつぶれたような音が川下の方で起《お》こって、それからしばらくしいんとしました。と思ったらあの赤帽《あかぼう》の信号手《しんごうしゅ》がまた青い旗《はた》をふって叫《さけ》んでいたのです。
「いま
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