もカムパネルラもいっしょにうたいだしたのです。
そして青い橄欖《かんらん》の森が、見えない天の川の向《む》こうにさめざめと光りながらだんだんうしろの方へ行ってしまい、そこから流《なが》れて来るあやしい楽器《がっき》の音も、もう汽車のひびきや風の音にすりへらされてずうっとかすかになりました。
「あ、孔雀《くじゃく》がいるよ。あ、孔雀《くじゃく》がいるよ」
「あの森|琴《ライラ》の宿《やど》でしょう。あたしきっとあの森の中にむかしの大きなオーケストラの人たちが集《あつ》まっていらっしゃると思うわ、まわりには青い孔雀《くじゃく》やなんかたくさんいると思うわ」
「ええ、たくさんいたわ」女の子がこたえました。
ジョバンニはその小さく小さくなっていまはもう一つの緑《みどり》いろの貝《かい》ぼたんのように見える森の上にさっさっと青じろく時々光ってその孔雀《くじゃく》がはねをひろげたりとじたりする光の反射《はんしゃ》を見ました。
「そうだ、孔雀《くじゃく》の声だってさっき聞こえた」カムパネルラが女の子に言《い》いました。
「ええ、三十|疋《ぴき》ぐらいはたしかにいたわ」女の子が答えました。
ジョ
前へ
次へ
全110ページ中70ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング