らすでない。みんなかささぎだ」カムパネルラがまた何気なくしかるように叫《さけ》びましたので、ジョバンニはまた思わず笑《わら》い、女の子はきまり悪《わる》そうにしました。まったく河原《かわら》の青じろいあかりの上に、黒い鳥がたくさんたくさんいっぱいに列《れつ》になってとまってじっと川の微光《びこう》を受けているのでした。
「かささぎですねえ、頭のうしろのとこに毛がぴんと延《の》びてますから」青年はとりなすように言《い》いました。
向《む》こうの青い森の中の三角標《さんかくひょう》はすっかり汽車の正面《しょうめん》に来ました。そのとき汽車のずうっとうしろの方から、あの聞きなれた三〇六番の讃美歌《さんびか》のふしが聞こえてきました。よほどの人数で合唱《がっしょう》しているらしいのでした。青年はさっと顔いろが青ざめ、たって一ぺんそっちへ行きそうにしましたが思いかえしてまたすわりました。かおる子はハンケチを顔にあててしまいました。
ジョバンニまでなんだか鼻《はな》が変《へん》になりました。けれどもいつともなく誰《だれ》ともなくその歌は歌い出されだんだんはっきり強くなりました。思わずジョバンニ
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