その銀河《ぎんが》のお祭《まつ》りなのですから、みなさんは外へでてよくそらをごらんなさい。ではここまでです。本やノートをおしまいなさい」
 そして教室じゅうはしばらく机《つくえ》の蓋《ふた》をあけたりしめたり本を重《かさ》ねたりする音がいっぱいでしたが、まもなくみんなはきちんと立って礼《れい》をすると教室を出ました。

     二 活版所《かっぱんじょ》

 ジョバンニが学校の門を出るとき、同じ組の七、八人は家へ帰らずカムパネルラをまん中にして校庭《こうてい》の隅《すみ》の桜《さくら》の木のところに集《あつ》まっていました。それはこんやの星祭《ほしまつ》りに青いあかりをこしらえて川へ流《なが》す烏瓜《からすうり》を取《と》りに行く相談《そうだん》らしかったのです。
 けれどもジョバンニは手を大きく振《ふ》ってどしどし学校の門《もん》を出て来ました。すると町の家々ではこんやの銀河《ぎんが》の祭《まつ》りにいちいの葉《は》の玉《たま》をつるしたり、ひのきの枝《えだ》にあかりをつけたり、いろいろしたくをしているのでした。
 家へは帰らずジョバンニが町を三つ曲《ま》がってある大きな活版所《か
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