士《だいがくし》はあわてて走って行きました。
「もう時間だよ。行こう」カムパネルラが地図と腕時計《うでどけい》とをくらべながら言《い》いました。
「ああ、ではわたくしどもは失礼《しつれい》いたします」ジョバンニは、ていねいに大学士《だいがくし》におじぎしました。
「そうですか。いや、さよなら」大学士《だいがくし》は、また忙《いそが》しそうに、あちこち歩きまわって監督《かんとく》をはじめました。
二人《ふたり》は、その白い岩《いわ》の上を、一生けん命《めい》汽車におくれないように走りました。そしてほんとうに、風のように走れたのです。息《いき》も切れず膝《ひざ》もあつくなりませんでした。
こんなにしてかけるなら、もう世界《せかい》じゅうだってかけれると、ジョバンニは思いました。
そして二人《ふたり》は、前のあの河原《かわら》を通り、改札口《かいさつぐち》の電燈《でんとう》がだんだん大きくなって、まもなく二人《ふたり》は、もとの車室の席《せき》にすわっていま行って来た方を、窓《まど》から見ていました。
八 鳥を捕《と》る人
「ここへかけてもようございますか」
がさがさし
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