いました。
 さきに降《お》りた人たちは、もうどこへ行ったか一人《ひとり》も見えませんでした。二人《ふたり》がその白い道を、肩《かた》をならべて行きますと、二人《ふたり》の影《かげ》は、ちょうど四方に窓《まど》のある室《へや》の中の、二本の柱《はしら》の影《かげ》のように、また二つの車輪《しゃりん》の輻《や》のように幾本《いくほん》も幾本《いくほん》も四方へ出るのでした。そしてまもなく、あの汽車から見えたきれいな河原《かわら》に来ました。
 カムパネルラは、そのきれいな砂《すな》を一つまみ、掌《てのひら》にひろげ、指《ゆび》できしきしさせながら、夢《ゆめ》のように言《い》っているのでした。
「この砂《すな》はみんな水晶《すいしょう》だ。中で小さな火が燃《も》えている」
「そうだ」どこでぼくは、そんなことを習《なら》ったろうと思いながら、ジョバンニもぼんやり答えていました。
 河原《かわら》の礫《こいし》は、みんなすきとおって、たしかに水晶《すいしょう》や黄玉《トパーズ》や、またくしゃくしゃの皺曲《しゅうきょく》をあらわしたのや、また稜《かど》から霧《きり》のような青白い光を出す鋼玉《コ
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