ょう》の、大きな時計《とけい》の前に来てとまりました。
さわやかな秋の時計《とけい》の盤面《ばんめん》には、青く灼《や》かれたはがねの二本の針《はり》が、くっきり十一時を指《さ》しました。みんなは、一ぺんにおりて、車室の中はがらんとなってしまいました。
〔二十分|停車《ていしゃ》〕と時計《とけい》の下に書いてありました。
「ぼくたちも降《お》りて見ようか」ジョバンニが言《い》いました。
「降《お》りよう」二人《ふたり》は一|度《ど》にはねあがってドアを飛《と》び出して改札口《かいさつぐち》へかけて行きました。ところが改札口《かいさつぐち》には、明るい紫《むらさき》がかった電燈《でんとう》が、一つ点《つ》いているばかり、誰《だれ》もいませんでした。そこらじゅうを見ても、駅長《えきちょう》や赤帽《あかぼう》らしい人の、影《かげ》もなかったのです。
二人《ふたり》は、停車場《ていしゃば》の前の、水晶細工《すいしょうざいく》のように見える銀杏《いちょう》の木に囲《かこ》まれた、小さな広場に出ました。
そこから幅《はば》の広いみちが、まっすぐに銀河《ぎんが》の青光《あおびかり》の中へ通って
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