けれども、誰《だれ》だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸《さいわい》なんだねえ。だから、おっかさんは、ぼくをゆるしてくださると思う」カムパネルラは、なにかほんとうに決心《けっしん》しているように見えました。
にわかに、車のなかが、ぱっと白く明るくなりました。見ると、もうじつに、金剛石《こんごうせき》や草の露《つゆ》やあらゆる立派《りっぱ》さをあつめたような、きらびやかな銀河《ぎんが》の河床《かわどこ》の上を、水は声もなくかたちもなく流《なが》れ、その流《なが》れのまん中に、ぼうっと青白く後光《ごこう》の射《さ》した一つの島《しま》が見えるのでした。その島《しま》の平《たい》らないただきに、立派《りっぱ》な眼《め》もさめるような、白い十字架《じゅうじか》がたって、それはもう、凍《こお》った北極《ほっきょく》の雲で鋳《い》たといったらいいか、すきっとした金いろの円光をいただいて、しずかに永久《えいきゅう》に立っているのでした。
「ハレルヤ、ハレルヤ」前からもうしろからも声が起《お》こりました。ふりかえって見ると、車室の中の旅人《たびびと》たちは、みなまっすぐにきもののひだを垂《
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