一時間|半《はん》で帰ってくるよ」と言《い》いながら暗《くら》い戸口《とぐち》を出ました。
四 ケンタウル祭《さい》の夜
ジョバンニは、口笛《くちぶえ》を吹《ふ》いているようなさびしい口つきで、檜《ひのき》のまっ黒にならんだ町の坂《さか》をおりて来たのでした。
坂《さか》の下に大きな一つの街燈《がいとう》が、青白く立派《りっぱ》に光って立っていました。ジョバンニが、どんどん電燈《でんとう》の方へおりて行きますと、いままでばけもののように、長くぼんやり、うしろへ引いていたジョバンニの影《かげ》ぼうしは、だんだん濃《こ》く黒くはっきりなって、足をあげたり手を振《ふ》ったり、ジョバンニの横《よこ》の方へまわって来るのでした。
(ぼくは立派《りっぱ》な機関車《きかんしゃ》だ。ここは勾配《こうばい》だから速《はや》いぞ。ぼくはいまその電燈《でんとう》を通り越《こ》す。そうら、こんどはぼくの影法師《かげぼうし》はコンパスだ。あんなにくるっとまわって、前の方へ来た)
とジョバンニが思いながら、大股《おおまた》にその街燈《がいとう》の下を通り過《す》ぎたとき、いきなりひるまのザネリ
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