授業《じゅぎょう》のとき先生がかわるがわる教室へ持《も》って行くよ」
「お父さんはこの次《つぎ》はおまえにラッコの上着《うわぎ》をもってくるといったねえ」
「みんながぼくにあうとそれを言《い》うよ。ひやかすように言《い》うんだ」
「おまえに悪口《わるくち》を言《い》うの」
「うん、けれどもカムパネルラなんか決《けっ》して言《い》わない。カムパネルラはみんながそんなことを言《い》うときはきのどくそうにしているよ」
「カムパネルラのお父さんとうちのお父さんとは、ちょうどおまえたちのように小さいときからのお友達《ともだち》だったそうだよ」
「ああだからお父さんはぼくをつれてカムパネルラのうちへもつれて行ったよ。あのころはよかったなあ。ぼくは学校から帰る途中《とちゅう》たびたびカムパネルラのうちに寄《よ》った。カムパネルラのうちにはアルコールランプで走る汽車があったんだ。レールを七つ組み合わせるとまるくなってそれに電柱《でんちゅう》や信号標《しんごうひょう》もついていて信号標《しんごうひょう》のあかりは汽車が通るときだけ青くなるようになっていたんだ。いつかアルコールがなくなったとき石油《せきゆ
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