、ずうっと遠くが大へん青くて明るくてそこに黄金の葉《は》をもった立派《りっぱ》な樹《き》がぞろっとならんでさんさんさんと梢《こずえ》を鳴らしているように思ったのです。アラムハラドは眼をひらきました。子供《こども》らがじっとアラムハラドを見上げていました。アラムハラドは言いました。
「うん。そうだ。人はまことを求《もと》める。真理《しんり》を求める。ほんとうの道を求めるのだ。人が道を求めないでいられないことはちょうど鳥の飛《と》ばないでいられないとおんなじだ。おまえたちはよくおぼえなければいけない。人は善《ぜん》を愛《あい》し道を求めないでいられない。それが人の性質《せいしつ》だ。これをおまえたちは堅《かた》くおぼえてあとでも決《けっ》して忘《わす》れてはいけない。おまえたちはみなこれから人生という非常《ひじょう》なけわしいみちをあるかなければならない。たとえばそれは葱嶺《パミール》の氷《こおり》や辛度《しんど》の流《なが》れや流沙《るさ》の火やでいっぱいなようなものだ。そのどこを通るときも決して今の二つを忘れてはいけない。それはおまえたちをまもる。それはいつもおまえたちを教える。決して
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