学者アラムハラドの見た着物
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)学者《がくしゃ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)十|石《こく》
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 学者《がくしゃ》のアラムハラドはある年十一人の子を教えておりました。
 みんな立派《りっぱ》なうちの子どもらばかりでした。
 王さまのすぐ下の裁判官《さいばんかん》の子もありましたし農商《のうしょう》の大臣《だいじん》の子も居《い》ました。また毎年じぶんの土地から十|石《こく》の香油《こうゆ》さえ穫《と》る長者《ちょうじゃ》のいちばん目の子も居たのです。
 けれども学者のアラムハラドは小さなセララバアドという子がすきでした。この子が何か答えるときは学者のアラムハラドはどこか非常《ひじょう》に遠くの方の凍《こお》ったように寂《しず》かな蒼黒《あおぐろ》い空を感《かん》ずるのでした。それでもアラムハラドはそんなに偉《えら》い学者でしたからえこひいきなどはしませんでした。
 アラムハラドの塾《じゅく》は街《まち》のはずれの楊《やなぎ》の林の中にありました。
 みんなは毎日その石で畳《たた》んだ鼠《
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