ねずみ》いろの床《ゆか》に座《すわ》って古くからの聖歌《せいか》を諳誦《あんしょう》したり兆《ちょう》よりももっと大きな数まで数えたりまた数を互《たがい》に加えたり掛《か》け合せたりするのでした。それからいちばんおしまいには鳥や木や石やいろいろのことを習《なら》うのでした。
アラムハラドは長い白い着物《きもの》を着て学者のしるしの垂《た》れ布《ぬの》のついた帽子《ぼうし》をかぶり低《ひく》い椅子《いす》に腰掛《こしか》け右手には長い鞭《むち》をもち左手には本を支《ささ》えながらゆっくりと教えて行くのでした。
そして空気のしめりの丁度《ちょうど》いい日またむずかしい諳誦《あんしょう》でひどくつかれた次《つぎ》の日などはよくアラムハラドはみんなをつれて山へ行きました。
このおはなしは結局《けっきょく》学者《がくしゃ》のアラムハラドがある日自分の塾《じゅく》でまたある日山の雨の中でちらっと感《かん》じた不思議《ふしぎ》な着物《きもの》についてであります。
一
アラムハラドが言いました。
「火が燃《も》えるときは焔《ほのお》をつくる。焔というものはよく見ていると奇体《きた
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