。お前のお父さんはみんなのためには命《いのち》も惜《お》しくなかったのだ。ほかの人たちはどうだ。ブランダ。言ってごらん。」
 ブランダと呼《よ》ばれた子はすばやくきちんとなって答えました。
「人が歩くことよりも言うことよりももっとしないでいられないのはいいことです。」
 アラムハラドが云《い》いました。
「そうだ。私がそう言おうと思っていた。すべて人は善《よ》いこと、正しいことをこのむ。善《ぜん》と正義《せいぎ》とのためならば命を棄《す》てる人も多い。おまえたちはいままでにそう云う人たちの話を沢山《たくさん》きいて来た。決《けっ》してこれを忘《わす》れてはいけない。人の正義を愛《あい》することは丁度《ちょうど》鳥のうたわないでいられないと同じだ。セララバアド。お前は何か言いたいように見える。云《い》ってごらん。」
 小さなセララバアドは少しびっくりしたようでしたがすぐ落《お》ちついて答えました。
「人はほんとうのいいことが何だかを考えないでいられないと思います。」
 アラムハラドはちょっと眼《め》をつぶりました。眼をつぶったくらやみの中ではそこら中ぼうっと燐《りん》の火のように青く見え
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