びまたよく啼くものだ。それはたべ物をとってしまっても啼くのをやめない。またやすまない。どうして疲《つか》れないかと思うほどよく飛びまたよく啼くものだ。
 そんならなぜ鳥は啼くのかまた飛ぶのか。おまえたちにはわかるだろう。鳥はみな飛ばずにいられないで飛び啼かずに居《い》られないで啼く。それは生れつきなのだ。
 さて斯《こ》う云うふうに火はあつく、乾《かわ》かし、照《て》らし騰《のぼ》る、水はつめたく、しめらせ、下る、鳥は飛び、またなく。魚について獣《けもの》についておまえたちはもうみんなその性質を考えることができる。けれども一体どうだろう、小鳥が啼かないでいられず魚が泳《およ》がないでいられないように人はどういうことがしないでいられないだろう。人が何としてもそうしないでいられないことは一体どういう事だろう。考えてごらん。」
 アラムハラドは斯う言って堅《かた》く口を結《むす》び十一人の子供《こども》らを見まわしました。子供らはみな一生けん命《めい》考えたのです。大人《おとな》のように指《ゆび》をまげて唇《くちびる》にあてたりまっすぐに床《ゆか》を見たりしました。その中で大臣《だいじん》の
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