とならば水はみんな下に下ろうとしてお互《たが》い下れるとこまで落《お》ち着《つ》くからだ。波《なみ》ができたら必《かなら》ずそれがなおろうとする。それは波のあがったとこが下ろうとするからだ。このように水のつめたいこと、しめすこと下に行こうとすることは水の性質《せいしつ》なのだ。どうしてそうかと云《い》うならばそれはそう云う性質のものを水と呼ぶのだから仕方《しかた》ない。
 それからまたみんなは小鳥を知っている。鶯《うぐいす》やみそさざい、ひわやまたかけすなどからだが小さく大へん軽《かる》い。その飛《と》ぶときはほんとうによく飛ぶ。枝《えだ》から枝へうつるときはその羽をひらいたのさえわからないくらい早く、青ぞらを向《むこ》うへ飛んで行くときは一つのふるえる点のようだ。それほどこれらの鶯やひわなどは身軽《みがる》でよく飛ぶ。また一生けん命《めい》に啼《な》く。うぐいすならば春にはっきり啼く。みそさざいならばからだをうごかすたびにもうきっと啼いているのだ。
 これらの鳥のたくさん啼いている林の中へ行けばまるで雨が降《ふ》っているようだ。おまえたちはみんな知っている。このように小さな鳥はよく飛
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