としている。斯《こ》う云う工合《ぐあい》に火には二つの性質がある。なぜそうなのか。それは火の性質だから仕方《しかた》ない。そう云う、熱いもの、乾かそうとするもの、光るもの、照らそうとするもの軽いもの騰ろうとするものそれを焔と呼《よ》ぶのだから仕方ない。
それからまたみんなは水をよく知っている。水もやっぱり火のようにちゃんときまった性質がある。それは物《もの》をつめたくする。どんなものでも水にあってはつめたくなる。からだをあつい湯《ゆ》でふいても却《かえ》ってあとではすずしくなる。夏に銅の壺《つぼ》に水を入れ壺の外側《そとがわ》を水でぬらしたきれで固《かた》くつつんでおくならばきっとそれは冷《ひ》えるのだ。なんべんもきれをとりかえるとしまいにはまるで氷《こおり》のようにさえなる。このように水は物をつめたくする。また水はものをしめらすのだ。それから水はいつでも低《ひく》い処へ下ろうとする。鉢《はち》の中に水を入れるならまもなくそれはしずかになる。阿耨達池《あのくだっち》やすべて葱嶺《パミール》から南東の山の上の湖《みずうみ》は多くは鏡《かがみ》のように青く平《たい》らだ。なぜそう平らだか
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