た。
大臣《だいじん》の子のタルラはいちばんさきに立って鳥を見てはばあと両手《りょうて》をあげて追《お》い栗鼠《りす》を見つけては高く叫《さけ》んでおどしました。走ったりまた停《とま》ったりまるで夢中《むちゅう》で進《すす》みました。
みんなはかわるがわるいろいろなことをアラムハラドにたずねました。アラムハラドは時々はまだ一つの答をしないうちにも一つの返事《へんじ》をしなければなりませんでした。
セララバアドは小さな革《かわ》の水入れを肩《かた》からつるして首を垂《た》れてみんなの問《とい》やアラムハラドの答をききながらいちばんあとから少し笑《わら》ってついて来ました。
林はだんだん深《ふか》くなりかしの木やくすの木や空も見えないようでした。
そのときサマシャードという小さな子が一本の高いなつめの木を見つけて叫びました。
「なつめの木だぞ。なつめの木だ。とれないかなあ。」
みんなもアラムハラドも一度《いちど》にその高い梢を見上げました。アラムハラドは云《い》いました。
「あの木は高くてとどかない。私どもはその実《み》をとることができないのだ。けれどもおまえたちは名高いヴェー
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