て、あわてて飛《と》んで行ってしまいました。
ホモイは玉を取りあげて見ました。玉は赤や黄の焔《ほのお》をあげて、せわしくせわしく燃《も》えているように見えますが、実《じつ》はやはり冷《つめ》たく美《うつく》しく澄《す》んでいるのです。目にあてて空にすかして見ると、もう焔《ほのお》はなく、天の川が奇麗《きれい》にすきとおっています。目からはなすと、またちらりちらり美《うつく》しい火が燃《も》えだします。
ホモイはそっと玉をささげて、おうちへはいりました。そしてすぐお父さんに見せました。すると兎《うさぎ》のお父さんが玉を手にとって、めがねをはずしてよく調《しら》べてから申《もう》しました。
「これは有名《ゆうめい》な貝《かい》の火という宝物《たからもの》だ。これは大変《たいへん》な玉だぞ。これをこのまま一生|満足《まんぞく》に持《も》っている事《こと》のできたものは今までに鳥に二人魚に一人あっただけだという話だ。お前はよく気をつけて光をなくさないようにするんだぞ」
ホモイが申《もう》しました。
「それは大丈夫《だいじょうぶ》ですよ。僕《ぼく》は決《けっ》してなくしませんよ。そんな
前へ
次へ
全40ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング