貝《かい》の火
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)貝《かい》の火
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)一生|満足《まんぞく》に
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今は兎《うさぎ》たちは、みんなみじかい茶色の着物《きもの》です。
野原《のはら》の草はきらきら光り、あちこちの樺《かば》の木は白い花をつけました。
実《じつ》に野原《のはら》はいいにおいでいっぱいです。
子兎《こうさぎ》のホモイは、悦《よろこ》んでぴんぴん踊《おど》りながら申《もう》しました。
「ふん、いいにおいだなあ。うまいぞ、うまいぞ、鈴蘭《すずらん》なんかまるでパリパリだ」
風が来たので鈴蘭《すずらん》は、葉《は》や花を互《たが》いにぶっつけて、しゃりんしゃりんと鳴りました。
ホモイはもううれしくて、息《いき》もつかずにぴょんぴょん草の上をかけ出しました。
それからホモイはちょっと立ちどまって、腕《うで》を組んでほくほくしながら、
「まるで僕《ぼく》は川の波《なみ》の上で芸当《げいとう》をしているようだぞ」と言《い》いました。
本当にホモイは、いつか小さな流《な
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