が》れの岸《きし》まで来ておりました。
そこには冷《つめ》たい水がこぼんこぼんと音をたて、底《そこ》の砂《すな》がピカピカ光っています。
ホモイはちょっと頭を曲《ま》げて、
「この川を向《む》こうへ跳《と》び越《こ》えてやろうかな。なあに訳《わけ》ないさ。けれども川の向《む》こう側《がわ》は、どうも草が悪《わる》いからね」とひとりごとを言《い》いました。
すると不意《ふい》に流《なが》れの上《かみ》の方から、
「ブルルル、ピイ、ピイ、ピイ、ピイ、ブルルル、ピイ、ピイ、ピイ、ピイ」とけたたましい声がして、うす黒いもじゃもじゃした鳥のような形のものが、ばたばたばたばたもがきながら、流《なが》れて参《まい》りました。
ホモイは急《いそ》いで岸《きし》にかけよって、じっと待《ま》ちかまえました。
流《なが》されるのは、たしかにやせたひばりの子供《こども》です。ホモイはいきなり水の中に飛《と》び込《こ》んで、前あしでしっかりそれをつかまえました。
するとそのひばりの子供《こども》は、いよいよびっくりして、黄色なくちばしを大きくあけて、まるでホモイのお耳もつんぼになるくらい鳴くので
前へ
次へ
全40ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング