が》れの岸《きし》まで来ておりました。
 そこには冷《つめ》たい水がこぼんこぼんと音をたて、底《そこ》の砂《すな》がピカピカ光っています。
 ホモイはちょっと頭を曲《ま》げて、
 「この川を向《む》こうへ跳《と》び越《こ》えてやろうかな。なあに訳《わけ》ないさ。けれども川の向《む》こう側《がわ》は、どうも草が悪《わる》いからね」とひとりごとを言《い》いました。
 すると不意《ふい》に流《なが》れの上《かみ》の方から、
 「ブルルル、ピイ、ピイ、ピイ、ピイ、ブルルル、ピイ、ピイ、ピイ、ピイ」とけたたましい声がして、うす黒いもじゃもじゃした鳥のような形のものが、ばたばたばたばたもがきながら、流《なが》れて参《まい》りました。
 ホモイは急《いそ》いで岸《きし》にかけよって、じっと待《ま》ちかまえました。
 流《なが》されるのは、たしかにやせたひばりの子供《こども》です。ホモイはいきなり水の中に飛《と》び込《こ》んで、前あしでしっかりそれをつかまえました。
 するとそのひばりの子供《こども》は、いよいよびっくりして、黄色なくちばしを大きくあけて、まるでホモイのお耳もつんぼになるくらい鳴くので
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