たな》から薬《くすり》の箱《はこ》をおろしました。
 「おっかさん、僕《ぼく》ね、もじゃもじゃの鳥の子のおぼれるのを助《たす》けたんです」とホモイが言《い》いました。
 兎《うさぎ》のお母さんは箱《はこ》から万能散《まんのうさん》を一服《いっぷく》出してホモイに渡《わた》して、
 「もじゃもじゃの鳥の子って、ひばりかい」と尋《たず》ねました。
 ホモイは薬《くすり》を受《う》けとって、
 「たぶんひばりでしょう。ああ頭がぐるぐるする。おっかさん、まわりが変《へん》に見《み》えるよ」と言《い》いながら、そのままバッタリ倒《たお》れてしまいました。ひどい熱病《ねつびょう》にかかったのです。
       *
 ホモイが、おとうさんやおっかさんや、兎《うさぎ》のお医者《いしゃ》さんのおかげで、すっかりよくなったのは、鈴蘭《すずらん》にみんな青い実《み》ができたころでした。
 ホモイは、ある雲のない静《しず》かな晩《ばん》、はじめてうちからちょっと出てみました。
 南の空を、赤い星がしきりにななめに走りました。ホモイはうっとりそれを見とれました。すると不意《ふい》に、空でブルルッとはねの音がし
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