さえ葉《は》をちらっとも動かしません。
ただあのつりがねそうの朝の鐘《かね》だけは高く高く空にひびきました。
「カン、カン、カンカエコ、カンコカンコカン」おしまいの音がカアンと向《む》こうから戻《もど》って来ました。
そして狐《きつね》が角《かく》パンを三つ持《も》って半《はん》ズボンをはいてやって来ました。
「狐《きつね》。お早う」とホモイが言《い》いました。
狐《きつね》はいやな笑《わら》いようをしながら、
「いや昨日《きのう》はびっくりしましたぜ。ホモイさんのお父さんもずいぶんがんこですな。しかしどうです。すぐご機嫌《きげん》が直《なお》ったでしょう。今日は一つうんとおもしろいことをやりましょう。動物園《どうぶつえん》をあなたはきらいですか」と言《い》いました。
ホモイが、
「うん。きらいではない」と申《もう》しました。
狐《きつね》が懐《ふところ》から小さな網《あみ》を出しました。そして、
「そら、こいつをかけておくと、とんぼでも蜂《はち》でも雀《すずめ》でも、かけすでも、もっと大きなやつでもひっかかりますぜ。それを集《あつ》めて一つ動物園《どうぶつえん》を
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