ぐらの親子は、
「ごめんください。ごめんください」と言《い》いながら逃《に》げようとするのですが、みんな目が見えない上に足がきかないものですからただ草を掻《か》くだけです。
いちばん小さな子はもうあおむけになって気絶《きぜつ》したようです。狐《きつね》ははがみをしました。ホモイも思わず、
「シッシッ」と言《い》って足を鳴らしました。その時、
「こらっ、何をする」と言《い》う大きな声がして、狐《きつね》がくるくると四|遍《へん》ばかりまわって、やがていちもくさんに逃《に》げました。
見るとホモイのお父さんが来ているのです。
お父さんは、急《いそ》いでむぐらをみんな穴《あな》に入れてやって、上へもとのように石をのせて、それからホモイの首《くび》すじをつかんで、ぐんぐんおうちへ引いて行きました。
おっかさんが出て来て泣《な》いておとうさんにすがりました。お父さんが言《い》いました。
「ホモイ。お前はもう駄目《だめ》だぞ。今日こそ貝《かい》の火は砕《くだ》けたぞ。出して見ろ」
お母さんが涙《なみだ》をふきながら函《はこ》を出して来ました。お父さんは函《はこ》の蓋《ふた》を開《
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