つ渡《わた》しました。ホモイはそれを急《いそ》いで台所《だいどころ》の棚《たな》の上に載《の》せてまた野原に来《き》ますと狐《きつね》がまだ待《ま》っていて言《い》いました。
「ホモイさん。何かおもしろいことをしようじゃありませんか」ホモイが、
「どんなこと?」とききますと狐《きつね》が言《い》いました。
「むぐらを罰《ばつ》にするのはどうです。あいつは実《じつ》にこの野原の毒《どく》むしですぜ。そしてなまけものですぜ。あなたが一|遍《ぺん》許《ゆる》すって言《い》ったのなら、今日は私だけでひとつむぐらをいじめますから、あなたはだまって見ておいでなさい。いいでしょう」
ホモイは、
「うん、毒《どく》むしなら少しいじめてもよかろう」と言《い》いました。
狐《きつね》は、しばらくあちこち地面《じめん》を嗅《か》いだり、とんとんふんでみたりしていましたが、とうとう一つの大きな石を起《お》こしました。するとその下にむぐらの親子が八|疋《ぴき》かたまってぶるぶるふるえておりました。狐《きつね》が、
「さあ、走れ、走らないと、噛《か》み殺《ころ》すぞ」といって足をどんどんしました。む
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