けとって眼鏡《めがね》をはずして、よくよく調《しら》べてから言《い》いました。
 「お前はこんなものを狐《きつね》にもらったな。これは盗《ぬす》んで来たもんだ。こんなものをおれは食べない」そしておとうさんは、も一つホモイのお母さんにあげようと持《も》っていた分も、いきなり取《と》りかえして自分のといっしょに土に投《な》げつけてむちゃくちゃにふみにじってしまいました。
 ホモイはわっと泣《な》きだしました。兎《うさぎ》のお母さんもいっしょに泣《な》きました。
 お父さんがあちこち歩きながら、
 「ホモイ、お前はもう駄目《だめ》だ。玉を見てごらん。もうきっと砕《くだ》けているから」と言《い》いました。
 お母さんが泣《な》きながら函《はこ》を出しました。玉はお日さまの光を受《う》けて、まるで天上に昇《のぼ》って行きそうに美《うつく》しく燃《も》えました。
 お父さんは玉をホモイに渡《わた》してだまってしまいました。ホモイも玉を見ていつか涙《なみだ》を忘《わす》れてしまいました。
       *
 次《つぎ》の日ホモイはまた野原に出ました。
 狐《きつね》が走って来てすぐ角《かく》パンを三
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