んかいらないよ。今に狐《きつね》が来たらお前たちの仲間《なかま》をみんなひどい目にあわしてやるよ。見ておいで」と足ぶみをして言《い》いました。
 土の中ではひっそりとして声もなくなりました。
 それからりすは、夕方《ゆうがた》までに鈴蘭《すずらん》の実《み》をたくさん集《あつ》めて、大騒《おおさわ》ぎをしてホモイのうちへ運《はこ》びました。
 おっかさんが、その騒《さわ》ぎにびっくりして出て見て言《い》いました。
 「おや、どうしたの、りすさん」
 ホモイが横《よこ》から口を出して、
 「おっかさん。僕《ぼく》の腕《うで》まえをごらん。まだまだ僕《ぼく》はどんな事《こと》でもできるんですよ」と言《い》いました。兎《うさぎ》のお母さんは返事《へんじ》もなく黙《だま》って考えておりました。
 するとちょうど兎《うさぎ》のお父さんが戻《もど》って来て、その景色《けしき》をじっと見てから申《もう》しました。
 「ホモイ、お前は少し熱《ねつ》がありはしないか。むぐらをたいへんおどしたそうだな。むぐらの家《うち》では、もうみんなきちがいのようになって泣《な》いてるよ。それにこんなにたくさんの実《み
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