》を全体《ぜんたい》誰《だれ》がたべるのだ」
 ホモイは泣《な》きだしました。りすはしばらくきのどくそうに立って見ておりましたが、とうとうこそこそみんな逃《に》げてしまいました。
 兎《うさぎ》のお父さんがまた申《もう》しました。
 「お前はもうだめだ。貝《かい》の火を見てごらん。きっと曇《くも》ってしまっているから」
 兎《うさぎ》のおっかさんまでが泣《な》いて、前かけで涙をそっとぬぐいながら、あの美しい玉のはいった瑪瑙《めのう》の函《はこ》を戸棚《とだな》から取り出しました。
 兎《うさぎ》のおとうさんは函《はこ》を受けとって蓋《ふた》をひらいて驚《おどろ》きました。
 珠《たま》は一昨日《おととい》の晩《ばん》よりも、もっともっと赤く、もっともっと速《はや》く燃《も》えているのです。
 みんなはうっとりみとれてしまいました。兎《うさぎ》のおとうさんはだまって玉をホモイに渡《わた》してご飯《はん》を食べはじめました。ホモイもいつか涙《なみだ》がかわきみんなはまた気持ちよく笑《わら》い出しいっしょにご飯《はん》をたべてやすみました。
       *
 次《つぎ》の朝早くホモイはまた
前へ 次へ
全40ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング