らと飛んで過《す》ぎました。
子供らが長い棒《ぼう》に紐《ひも》をつけて、それを追いました。
(雁の童子だ。雁の童子だ。)
子供らは棒を棄《す》て手をつなぎ合って大きな環《わ》になり須利耶さま親子を囲《かこ》みました。
須利耶さまは笑っておいででございました。
子供らは声を揃《そろ》えていつものようにはやしまする。
(雁の子、雁の子雁童子、
空から須利耶におりて来た。)と斯うでございます。けれども一人の子供が冗談《じょうだん》に申しまするには、
(雁のすてご、雁のすてご、
春になってもまだ居《い》るか。)
みんなはどっと笑いましてそれからどう云うわけか小さな石が一つ飛んで来て童子の頬《ほお》を打ちました。須利耶さまは童子をかばってみんなに申されますのには、
おまえたちは何をするんだ、この子供は何か悪《わる》いことをしたか、冗談にも石を投《な》げるなんていけないぞ。
子供らが叫んでばらばら走って来て童子に詫《わ》びたり慰めたりいたしました。或《あ》る子は前掛《まえか》けの衣嚢《かくし》から干《ほ》した無花果《いちじく》を出して遣《や》ろうといたしました。
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