雁《かり》の童子《どうじ》
宮沢賢治
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[表記について]
●底本に従い、小学校1・2年の学習配当漢字を除く漢字にはルビをつけた。ただし、同一語句についてはルビは初出のみにつけた。
●ルビは「漢字《ルビ》」の形式で処理した。
●[※番号]は、入力者の補注を示す。補注は、ファイルの末尾に置いた。
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流沙《るさ》[※1]の南の、楊《やなぎ》で囲まれた小さな泉《いずみ》で、私は、いった麦粉《むぎこ》を水にといて、昼の食事《しょくじ》をしておりました。
そのとき、一人の巡礼《じゅんれい》のおじいさんが、やっぱり食事のために、そこへやって来ました。私たちはだまって軽《かる》く礼をしました。
けれども、半日まるっきり人にも出会《であ》わないそんな旅《たび》でしたから、私は食事がすんでも、すぐに泉とその年老《としと》った巡礼とから、別《わか》れてしまいたくはありませんでした。
私はしばらくその老人《ろうじん》の、高い咽喉仏《のどぼとけ》のぎくぎく動《うご》くのを、見るともなしに見ていました。何か話し掛《か》けたいと思いましたが、どうもあんまり向《むこ》うが寂《しず》かなので、私は少しき
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