たの子にしてお育《そだ》てを願《ねが》います。おねがいでございます。)と斯うでございます。
須利耶さまが申されました。
(いいとも。すっかり判《わか》った。引き受けた。安心《あんしん》してくれ。)
すると老人は手を擦《こす》って地面に頭を垂《た》れたと思うと、もう燃えつきて、影《かげ》もかたちもございませんでした。須利耶さまも従弟さまも鉄砲をもったままぼんやりと立っていられましたそうでいったい二人いっしょに夢を見たのかとも思われましたそうですがあとで従弟さまの申されますにはその鉄砲はまだ熱《あつ》く弾丸は減《へ》っておりそのみんなのひざまずいた所《ところ》の草はたしかに倒《たお》れておったそうでございます。
そしてもちろんそこにはその童子が立っていられましたのです。須利耶さまはわれにかえって童子に向って云われました。
(お前は今日《きょう》からおれの子供だ。もう泣かないでいい。お前の前のお母《かあ》さんや兄さんたちは、立派《りっぱ》な国に昇《のぼ》って行かれた。さあおいで。)
須利耶さまはごじぶんのうちへ戻《もど》られました。途中《とちゅう》の野原は青い石でしんとして子供は泣き
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