、お前もさような慰《なぐさ》みの殺生《せっしょう》を、もういい加減《かげん》やめたらどうだと、斯《こ》うでございました。
ところが従弟の方が、まるですげなく、やめられないと、ご返事《へんじ》です。
(お前はずいぶんむごいやつだ、お前の傷《いた》めたり殺《ころ》したりするものが、一体どんなものだかわかっているか、どんなものでもいのちは悲《かな》しいものなのだぞ。)と、須利耶さまは重《かさ》ねておさとしになりました。
(そうかもしれないよ。けれどもそうでないかもしれない。そうだとすればおれは一層《いっそう》おもしろいのだ、まあそんな下らない話はやめろ、そんなことは昔の坊主《ぼうず》どもの言うこった、見ろ、向うを雁が行くだろう、おれは仕止《しと》めて見せる。)と従弟のかたは鉄砲を構《かま》えて、走って見えなくなりました。
須利耶さまは、その大きな黒い雁の列《れつ》を、じっと眺《なが》めて立たれました。
そのとき俄《にわ》かに向うから、黒い尖《とが》った弾丸《だんがん》が昇《のぼ》って、まっ先きの雁の胸《むね》を射《い》ました。
雁は二、三べん揺《ゆ》らぎました。見る見るからだに火が燃
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