たのです。それでも何気なく申されますには、
(なるほど立派なもんだ。あまりよく出来てなんだか恐《こわ》いようだ。この天童《てんどう》はどこかお前に肖《に》ているよ。)
須利耶さまは童子をふりかえりました。そしたら童子はなんだかわらったまま、倒れかかっていられました。須利耶さまは愕ろいて急いで抱《だ》き留《と》められました。童子はお父さんの腕の中で夢《ゆめ》のようにつぶやかれました。
(おじいさんがお迎《むか》いをよこしたのです。)
須利耶さまは急いで叫ばれました。
(お前どうしたのだ。どこへも行ってはいけないよ。)
童子が微《かす》かに云われました。
(お父さん。お許《ゆる》し下さい。私はあなたの子です。この壁は前にお父さんが書いたのです。そのとき私は王の……だったのですがこの絵ができてから王さまは殺されわたくしどもはいっしょに出家《しゅっけ》したのでしたが敵王《てきおう》がきて寺を焼《や》くとき二日ほど俗服《ぞくふく》を着てかくれているうちわたくしは恋人《こいびと》があってこのまま出家にかえるのをやめようかと思ったのです。)
人々が集《あつま》って口々に叫びました。
(雁の童
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