子だ。雁の童子だ。)
 童子はも一度、少し唇《くちびる》をうごかして、何かつぶやいたようでございましたが、須利耶さまはもうそれをお聞きとりなさらなかったと申します。
 私の知っておりますのはただこれだけでございます。」
 老人はもう行かなければならないようでした。私はほんとうに名残《なご》り惜《お》しく思い、まっすぐに立って合掌《がっしょう》して申しました。
「尊《とうと》いお物語《ものがたり》をありがとうございました。まことにお互《たが》い、ちょっと沙漠のへりの泉で、お眼にかかって、ただ一時を、一緒《いっしょ》に過ごしただけではございますが、これもかりそめのことではないと存《ぞん》じます。ほんの通りがかりの二人の旅人《たびびと》とは見えますが、実はお互がどんなものかもよくわからないのでございます。いずれはもろともに、善逝《スガタ》[※6]の示《しめ》された光の道を進み、かの無上菩提《むじょうぼだい》[※7]に至《いた》ることでございます。それではお別れいたします。さようなら。」
 老人は、黙って礼を返しました。何か云いたいようでしたが黙って俄かに向うを向き、今まで私の来た方の荒地《あ
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