ではさよならね。」
「さよならね。」そしてカン蛙は又ピチャピチャ林の中を歩き、プイプイ堰《せき》を泳いで、おうちに帰ってやっと安心しました。
※
丁度そのころブン蛙はベン蛙のところへやって来たのでした。
「今日は、今日は。」
「はい。やあ、君か。はひれ。」
「カンが来たらう。」
「うん。いまいましいね。」
「全くだ。畜生。何とかひどい目にあはしてやりたいね。」
「僕がうまいこと考へたよ。明日の朝ね、雨がはれたら結婚式の前に一寸《ちょっと》散歩しようと云ってあいつを引っぱり出して、あそこの萱《かや》の刈跡をあるくんだよ。僕らも少しは痛いだらうがまあ我慢してさ。するとあいつのゴム靴《ぐつ》がめちゃめちゃになるだらう。」
「うん。それはいゝね。しかし僕はまだそれ位ぢゃ腹が癒《い》えないよ。結婚式がすんだらあいつらを引っぱり出して、あの畑の麦をほした杭《くひ》の穴に落してやりたいね。上に何か木の葉でもかぶせて置かう。それは僕がやって置くよ。面白いよ。」
「それもいゝね。ぢゃ、雨がはれたらね。」
「うん。」
「ではさよならね。」
蛙《かへる》の挨拶《あいさつ》の「さよ
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