蛙のゴム靴
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)楢《なら》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三|疋《びき》
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松の木や楢《なら》の木の林の下を、深い堰《せき》が流れて居《を》りました。岸には茨《いばら》やつゆ草やたでが一杯にしげり、そのつゆくさの十本ばかり集った下のあたりに、カン蛙《がへる》のうちがありました。
それから、林の中の楢の木の下に、ブン蛙のうちがありました。
林の向ふのすゝきのかげには、ベン蛙のうちがありました。
三|疋《びき》は年も同じなら大きさも大てい同じ、どれも負けず劣らず生意気で、いたづらものでした。
ある夏の暮れ方、カン蛙ブン蛙ベン蛙の三疋は、カン蛙の家の前のつめくさの広場に座って、雲見といふことをやって居りました。一体蛙どもは、みんな、夏の雲の峯を見ることが大すきです。じっさいあのまっしろなプクプクした、玉髄《ぎょくずゐ》のやうな、玉あられのやうな、又|蛋白石《たんぱくせき》を刻んでこさへた葡萄《ぶだう》の置物のやうな雲の峯は、誰《たれ》の目にも立派に見えますが、蛙どもには殊にそれが見事な
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