ぶんの杜《もり》の方に飛びはじめ十八隻はしたがいました。
杜に帰って烏の駆逐艦は、みなほうほう白い息をはきました。
「けがは無いか。誰《たれ》かけがしたものは無いか。」烏の大尉はみんなをいたわってあるきました。
夜がすっかり明けました。
桃《もも》の果汁《しる》のような陽《ひ》の光は、まず山の雪にいっぱいに注ぎ、それからだんだん下に流れて、ついにはそこらいちめん、雪のなかに白百合《しろゆり》の花を咲かせました。
ぎらぎらの太陽が、かなしいくらいひかって、東の雪の丘《おか》の上に懸《かか》りました。
「観兵式、用意っ、集れい。」大監督が叫びました。
「観兵式、用意っ、集れい。」各艦隊長が叫びました。
みんなすっかり雪のたんぼにならびました。
烏の大尉は列からはなれて、ぴかぴかする雪の上を、足をすくすく延ばしてまっすぐに走って大監督の前に行きました。
「報告、きょうあけがた、セピラの峠の上に敵艦の碇泊《ていはく》を認めましたので、本艦隊は直ちに出動、撃沈《げきちん》いたしました。わが軍死者なし。報告終りっ。」
駆逐艦隊はもうあんまりうれしくて、熱い涙《なみだ》をぼろぼろ雪の上
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