にこぼしました。
烏の大監督も、灰いろの眼から泪《なみだ》をながして云いました。
「ギイギイ、ご苦労だった。ご苦労だった。よくやった。もうおまえは少佐になってもいいだろう。おまえの部下の叙勲《じょくん》はおまえにまかせる。」
烏の新らしい少佐は、お腹《なか》が空《す》いて山から出て来て、十九隻に囲まれて殺された、あの山烏を思い出して、あたらしい泪をこぼしました。
「ありがとうございます。就《つい》ては敵の死骸《しがい》を葬《ほうむ》りたいとおもいますが、お許し下さいましょうか。」
「よろしい。厚く葬ってやれ。」
烏の新らしい少佐は礼をして大監督の前をさがり、列に戻《もど》って、いまマジエルの星の居るあたりの青ぞらを仰ぎました。(ああ、マジエル様、どうか憎《にく》むことのできない敵を殺さないでいいように早くこの世界がなりますように、そのためならば、わたくしのからだなどは、何べん引き裂かれてもかまいません。)マジエルの星が、ちょうど来ているあたりの青ぞらから、青いひかりがうらうらと湧きました。
美しくまっ黒な砲艦の烏は、そのあいだ中、みんなといっしょに、不動の姿勢をとって列《なら》
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