かかります。マジエル様と叫びながらまた愕いて眼をさますというあんばいでした。
烏の大尉はこちらで、その姿勢を直すはねの音から、そのマジエルを祈《いの》る声まですっかり聴《き》いて居りました。
じぶんもまたためいきをついて、そのうつくしい七つのマジエルの星を仰《あお》ぎながら、ああ、あしたの戦《たたかい》でわたくしが勝つことがいいのか、山烏がかつのがいいのか、それはわたくしにわかりません、ただあなたのお考《かんがえ》のとおりです、わたくしはわたくしにきまったように力いっぱいたたかいます、みんなみんなあなたのお考えのとおりですとしずかに祈って居りました。そして東のそらには早くも少しの銀の光が湧《わ》いたのです。
ふと遠い冷たい北の方で、なにか鍵《かぎ》でも触《ふ》れあったようなかすかな声がしました。烏《からす》の大尉は夜間双眼鏡《ナイトグラス》を手早く取って、きっとそっちを見ました。星あかりのこちらのぼんやり白い峠《とうげ》の上に、一本の栗《くり》の木が見えました。その梢にとまって空を見あげているものは、たしかに敵の山烏です。大尉の胸は勇ましく躍《おど》りました。
「があ、非常|召集
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