あたまを曲げました。
その昆布《こんぶ》のような黒いなめらかな梢《こずえ》の中では、あの若い声のいい砲艦が、次から次といろいろな夢《ゆめ》を見ているのでした。
烏の大尉とただ二人、ばたばた羽をならし、たびたび顔を見合せながら、青黒い夜の空を、どこまでもどこまでものぼって行きました。もうマジエル様と呼ぶ烏の北斗七星《ほくとしちせい》が、大きく近くなって、その一つの星のなかに生えている青じろい苹果《りんご》の木さえ、ありありと見えるころ、どうしたわけか二人とも、急にはねが石のようにこわばって、まっさかさまに落ちかかりました。マジエル様と叫《さけ》びながら愕《おど》ろいて眼をさましますと、ほんとうにからだが枝から落ちかかっています。急いではねをひろげ姿勢を直し、大尉の居る方を見ましたが、またいつかうとうとしますと、こんどは山烏が鼻眼鏡《はなめがね》などをかけてふたりの前にやって来て、大尉に握手《あくしゅ》しようとします。大尉が、いかんいかん、と云って手をふりますと、山烏はピカピカする拳銃《ピストル》を出していきなりずどんと大尉を射殺《いころ》し、大尉はなめらかな黒い胸を張って倒《たお》れ
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