い光がみなぎり、小さな星がいくつか連合《れんごう》して爆発《ばくはつ》をやり、水車の心棒がキイキイ云います。
とうとう薄《うす》い鋼の空に、ピチリと裂罅《ひび》がはいって、まっ二つに開き、その裂《さ》け目から、あやしい長い腕《うで》がたくさんぶら下って、烏を握《つか》んで空の天井《てんじょう》の向う側へ持って行こうとします。烏の義勇艦隊はもう総掛りです。みんな急いで黒い股引《ももひき》をはいて一生けん命宙をかけめぐります。兄貴の烏も弟をかばう暇《ひま》がなく、恋人《こいびと》同志もたびたびひどくぶっつかり合います。
いや、ちがいました。
そうじゃありません。
月が出たのです。青いひしげた二十日の月が、東の山から泣いて登ってきたのです。そこで烏の軍隊はもうすっかり安心してしまいました。
たちまち杜はしずかになって、ただおびえて脚をふみはずした若い水兵が、びっくりして眼をさまして、があと一発、ねぼけ声の大砲を撃つだけでした。
ところが烏の大尉は、眼が冴《さ》えて眠《ねむ》れませんでした。
「おれはあした戦死するのだ。」大尉は呟《つぶ》やきながら、許嫁《いいなずけ》のいる杜の方に
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