の肩《かた》が重くなりました。そして何だか暖いのです。びっくりして振《ふ》りかえって見ましたらあの番人のおじいさんが心配そうに白い眉《まゆ》を寄せて私の肩に手を置いて立っているのです。その番人のおじいさんが云いました。
「どうしてそんなに泣いて居るの。おなかでも痛いのかい。朝早くから鳥のガラスの前に来てそんなにひどく泣くもんでない。」
 けれども私はどうしてもまだ泣きやむことができませんでした。おじいさんは又云いました。
「そんなに高く泣いちゃいけない。
 まだ入口を開けるに一時間半も間があるのにおまえだけそっと入れてやったのだ。
 それにそんなに高く泣いて表の方へ聞えたらみんな私に故障を云って来るんでないか。そんなに泣いていけないよ。どうしてそんなに泣いてんだ。」
 私はやっと云いました。
「だって蜂雀がもう私に話さないんだもの。」
 するとじいさんは高く笑いました。
「ああ、蜂雀が又おまえに何か話したね。そして俄かに黙《だま》り込んだね。そいつはいけない。この蜂雀はよくその術をやって人をからかうんだ。よろしい。私が叱《しか》ってやろう。」
 番人のおじいさんはガラスの前に進みました
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