。
「おい。蜂雀。今日で何度目だと思う。手帳へつけるよ。つけるよ。あんまりいけなけあ仕方ないから館長様へ申し上げてアイスランドへ送っちまうよ。
ええおい。さあ坊《ぼっ》ちゃん。きっとこいつは談《はな》します。早く涙《なみだ》をおふきなさい。まるで顔中ぐじゃぐじゃだ。そらええああすっかりさっぱりした。
お話がすんだら早く学校へ入らっしゃい。
あんまり長くなって厭《あ》きっちまうとこいつは又いろいろいやなことを云いますから。ではようがすか。」
番人のおじいさんは私の涙を拭《ふ》いて呉れてそれから両手をせなかで組んでことりことり向うへ見まわって行きました。
おじいさんのあし音がそのうすくらい茶色の室《へや》の中から隣《とな》りの室へ消えたとき蜂雀はまた私の方を向きました。
私はどきっとしたのです。
蜂雀は細い細いハアモニカの様な声でそっと私にはなしかけました。
「さっきはごめんなさい。僕すっかり疲《つか》れちまったもんですからね。」
私もやさしく言いました。
「蜂雀。僕ちっとも怒《おこ》っちゃいないんだよ。さっきの続きを話してお呉れ。」
蜂雀は語りはじめました。
「ペムペル
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