しはふと思い付いてそうたずねました。
「おとなはすこしもそこらあたりに居なかった。なぜならペムペルとネリの兄妹《きょうだい》の二人はたった二人だけずいぶん愉快《ゆかい》にくらしてたから。
けれどほんとうにかあいそうだ。
ペムペルという子は全くいい子だったのにかあいそうなことをした。
ネリという子は全くかあいらしい女の子だったのにかあいそうなことをした。」
蜂雀は俄《にわ》かにだまってしまいました。
私はもう全く気が気でありませんでした。
蜂雀はいよいよだまってガラスの向うでしんとしています。
私もしばらくは耐《こら》えて膝《ひざ》を両手で抱《かか》えてじっとしていましたけれどもあんまり蜂雀がいつまでもだまっているもんですからそれにそのだまりようと云ったらたとえ一ぺん死んだ人が二度とお墓から出て来ようたって口なんか聞くもんかと云うように見えましたのでとうとう私は居たたまらなくなりました。私は立ってガラスの前に歩いて行って両手をガラスにかけて中の蜂雀に云いました。
「ね、蜂雀、そのペムペルとネリちゃんとがそれから一体どうなったの、どうしたって云うの、ね、蜂雀、話してお呉《く》
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