したのだ。いまにみろ、ぼくは卑怯《ひきょう》なやつらはみんな片《かた》っぱしから叩《たた》きつけてやるから。
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一千九百二十七年八月廿一日
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稲《いね》がとうとう倒《たお》れてしまった。ぼくはもうどうしていいかわからない。あれぐらい昨日《きのう》までしっかりしていたのに、明方《あけがた》の烈《はげ》しい雷雨《らいう》からさっきまでにほとんど半分倒れてしまった。喜作《きさく》のもこっそり行ってみたけれどもやっぱり倒れた。いまもまだ降《ふ》っている。父はわらって大丈夫《だいじょうぶ》大丈夫だと云うけれどもそれはぼくをなだめるためでじつは大へんひどいのだ。母はまるでぼくのことばかり心配《しんぱい》している。ぼくはうちの稲が倒れただけなら何でもないのだ。ぼくが肥料《ひりょう》を教えた喜作のだってそれだけなら何でもない。それだけならぼくは冬に鉄道《てつどう》へ出ても行商《ぎょうしょう》してもきっと取《と》り返《かえ》しをつける。けれども、あれぐらい手入をしてあれぐらい肥料を考えてやってそれでこんなになるのならもう村はどこももっとよくなる見込《みこ
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