或る農学生の日誌
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)農《のう》学校
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|学期《がっき》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]
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序
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ぼくは農《のう》学校の三年生になったときから今日まで三年の間のぼくの日誌《にっし》を公開《こうかい》する。どうせぼくは字も文章《ぶんしょう》も下手《へた》だ。ぼくと同じように本気に仕事《しごと》にかかった人でなかったらこんなもの実《じつ》に厭《いや》な面白《おもしろ》くもないものにちがいない。いまぼくが読み返《かえ》してみてさえ実に意気地《いくじ》なく野蛮《やばん》なような気のするところがたくさんあるのだ。ちょうど小学校の読本の村のことを書いたところのようにじつにうそらしくてわざとらしくていやなところがあるのだ。けれどもぼくのはほんとうだから仕方《しかた》ない。ぼくらは空想《くうそう》でならどんなことでもすることができる。けれどもほんとうの仕事はみんなこんなにじみなのだ。そして
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