て焼《や》いた。籾《もみ》ができると父は細長《ほそなが》くきれいに藁《わら》を通して編《あ》んだ俵《たわら》につめて中へつめた。あれは合理的《ごうりてき》だと思う。湧水《わきみず》がないので、あのつつみへ漬《つ》けた。氷《こおり》がまだどての陰《かげ》には浮いているからちょうど摂氏零度《せっしれいど》ぐらいだろう。十二月にどてのひびを埋《う》めてから水は六分目までたまっていた。今年こそきっといいのだ。あんなひどい旱魃《かんばつ》が二年|続《つづ》いたことさえいままでの気象《きしょう》の統計《とうけい》にはなかったというくらいだもの、どんな偶然《ぐうぜん》が集《あつま》ったって今年まで続くなんてことはないはずだ。気候《きこう》さえあたり前だったら今年は僕はきっといままでの旱魃の損害《そんがい》を恢復《かいふく》してみせる。そして来年《らいねん》からはもううちの経済《けいざい》も楽にするし長根ぜんたいまできっと生々《いきいき》した愉快《ゆかい》なものにしてみせる。
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一千九百二十六年六月十四日 今日はやっと正午《しょ
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