ょねん》の旱害《かんがい》はいちばんよかった所《ところ》でもこんな工合《ぐあい》だったのだ。けれども陸羽《りくう》一三二|号《ごう》のほうは三|割《わり》ぐらいしか浮く分がなかった。それでも塩水|選《せん》をかけたので恰度《ちょうど》六|斗《と》あったから本田の一町一|反《たん》分には充分《じゅうぶん》だろう。とにかく僕《ぼく》は今日半日で大丈夫《だいじょうぶ》五十円の仕事《しごと》はした訳《わけ》だ。
なぜならいままでは塩水選をしないでやっと反当《たんあたり》二|石《こく》そこそこしかとっていなかったのを今度《こんど》はあちこちの農事試験場《のうじしけんじょう》の発表《はっぴょう》のように一割の二斗ずつの増収《ぞうしゅう》としても一町一反では二石二斗になるのだ。みんなにもほんとうにいいということが判《わか》るようになったら、ぼくは同じ塩水で長根《ちょうこん》ぜんたいのをやるようにしよう。一|軒《けん》のうちで三十円ずつ得《とく》してもこの部落全体《ぶらくぜんたい》では四百五十円になる。それが五、六人ただ半日の仕事《しごと》なのだ。塩水選をする間は父はそこらの冬の間のごみを集《あつ》め
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