た。


五月十三日 今日学校から帰って田に行ってみたら母だけ一人|居《い》て何だか嬉《うれ》しそうにして田の畦《あぜ》を切っていた。
 何かあったのかと思ってきいたら、今にお父さんから聞けといった。ぼくはきっと修学旅行のことだと思った。
 僕《ぼく》もそこで母が家へ帰るまで田打《たう》ちをして助《たす》けた。
 けれども父はまだ帰って来ない。


五月十四日、昨夜《さくや》父が晩《おそ》く帰って来て、僕を修学旅行にやると云った。母も嬉しそうだったし祖母もいろいろ向《むこ》うのことを聞いたことを云った。祖母の云うのはみんな北海道|開拓当時《かいたくとうじ》のことらしくて熊《くま》だのアイヌだの南瓜《かぼちゃ》の飯《めし》や玉蜀黍《とうもろこし》の団子《だんご》やいまとはよほどちがうだろうと思われた。今日学校へ行って武田《たけだ》先生へ行くと云《い》って届《とど》けたら先生も大へんよろこんだ。もうあと二人足りないけれども定員《ていいん》を超《こ》えたことにして県《けん》へは申請書《しんせいしょ》を出したそうだ。ぼくはもう行ってきっとすっかり見て来る、そしてみんなへ詳《くわ》しく話すのだ。
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